人に対して警戒する。
自分のことを知られるのが、怖い。
せいしんかにつういんしてるのよ。
そんな風に後ろ指をさされるのが怖い。
住んでいた町の精神科病院はいろんな噂をたてられていた。
あの駅を降りて、あの道を歩き、あの角を曲がるのが嫌だった。
あの総合病院の2階、その科の隣は小児科だった。
あの市立病院の受付に高校の同級生がいた。声を掛けられたらどうしようかと思った。
ただ部屋で寝てばかりの生活を送っていた頃、私を持て余した母が言った。
「昔はノイローゼといってね、座敷牢にいれられたのよ」
母もわたしの将来を思って追い詰められている毎日だった。
いろいろ聞こえてくることはあるけど、
わたしをいちばん追い詰めているのはわたし自身。
いちばん偏見を持っているのは、わたし自身なんだろう。